2008年3月14日金曜日

Leopard (Mac OS X 10.5) の「辞書」増強 その3


Leopard の「辞書」アプリ用のドイツ語-英語辞典のデータプラグイン、ドイツ語シソーラスのプラグインが登場した。

BeoLingus German-English
OpenThesaurus German

独英/英独辞典はケムニッツ工科大学の BEOLINGUS のオンライン辞書のデータが元になっている。9万語以上あるらしい。そういうインデックスの付け方になっているのだろう、類義語が一気に表示される(右図参照)。また、独→英だけでなく、英→独でも引ける。
ドイツ語シソーラスは OpenThesaurus のオンライン辞書データが元。4万4千語以上あるらしい。

いずれもフリー。やったね。

なお、すでに触れた羅英辞典中英辞典のほか、英語-アラビア語辞典のプラグインも出ている。

2008年3月10日月曜日

Suzuki Viola School


ヴィオラを一から始める人のための教則本で、初級から中・上級まで系統立ったコースになっているものは、現時点では、スズキ・メソッドの全八巻のこれがほとんど唯一ではないかと思われます。スズキのヴァイオリン教本をヴィオラ用にアレンジして、アメリカで制作されているもので、スズキの本家の日本国内では出版されていません。ヴァイオリン教本と重なる曲が多いですが、ヴィオラ独自の曲も加え、よく出来ていると言えます。

楽譜専門店などでも手に入りますが、国内で購入する場合は、おそらくアマゾンが一番安い。ところが、残念なことに、日本のアマゾンの商品表示は不親切で、どれが何巻なのかが分からなくて往生します(表紙の画像がある場合は、そこに書かれた Volume 1 などの文字で見分けがつきますが、画像がない場合も多い)。そこで、ご参考のため、日本のアマゾンの各巻へのリンクを以下に並べておきます。(実はここでISBNを調べてアフィリエイトリンクを張っただけ。)

Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 1
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 2
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 3
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 4
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 5
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 6
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 7
Suzuki Viola School: Viola Part, Volume 8

なお、収録曲などは、出版元 Alfred Publishing が出している Suzuki 教本の PDF カタログをご参照ください。

2008年3月6日木曜日

ボクシングとボウイング、そして左腕

甲野善紀の本数冊(荻野アンナ・甲野善紀『古武術で毎日がラクラク!―疲れない、ケガしない「体の使い方」』なんてのも含めて)に続いて、『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』 (光文社新書)を読む。甲野式の動きを取り入れて成果を挙げているスポーツ界の話をスポーツライターの織田淳太郎がまとめた本だ。

ひとまず目に付いたのはこんなポイントだ:

ボクシングでは、「拳を内側に捻り込むようにして打つべし」と、よく言われる。劇画『あしたのジョー』でも、丹下段平が矢吹丈にボクシングの初歩段階として教えていた。
これは、パンチの威力が増すという理由で指導されるのだが、実は拳を捻り込むことで、肩の「分離」も促されているのである。それによって、腕が瞬間的に長くなり、パンチのスピードが加速され、インパクトの衝撃がそれだけ大きくなる。さらに、捻り込むことで、上腕の筋肉線維のラインが真っ直ぐに伸び、力をよりダイレクトに拳に乗せることができるという利点もある。(43)


これはおそらくボクシングの「常識」(ぼくは知らなかったが)なのであって、ことさらに「ナンバ」ではないが、ダウンボウで弓先へ行くときの右腕の動きと一致する。その際も、手は内側に捻り込むようにして手首が下がり、肘が前に出て腕がまっすぐ伸びる。だからこのパンチの動きもよく理解できる。(この動きが「井桁崩し」とも重なり合うことは前に触れた。)

ではヴァイオリンを弾く場合の左腕はどうなのだろう?

「実は腕は肩からついているのではない。腕がついているのはさらに肉体の奥、すなわち鎖骨と胸骨の間にある胸鎖(きょうさ)関節からだ」(27)という認識は、以前から持っていた。だが、その意識を右腕にはある程度生かせているつもりでも、左腕のその点に関しては等閑に付してきたところがあった。

ヴァイオリニストの左腕は、つねに肘のところで曲がっており、また左手も、ネックの右側から楽器に接する以上、内側に、つまり左手のこの場合時計回りに、捻ることはありえない。(ネックに左手指を正しく置いていくためには、逆のひねりがむしろ必要で、ほんとうの初心者にはこれが案外難しいようだ。)

おそらく、上の記述に言う「肩の分離」ということが、左腕でも重要になってきそうな気がする。「肩甲骨と上腕骨の分離感覚」(30)とも言われている。「古武術では”割れる”という表現を使う」が、これは「上腕と肩を独立させて、別々に使う」ことと同義だという(40)。そもそも普通は利き腕ではないうえに、遠く伸ばすよりも折り畳んでいく動作が多くなる左腕は、この点の訓練が足りず、左肩が固まってしまっている奏者、つまり左腕のシフティング(ポジション移動)に鎖骨から肩にかけての部分が全く使えていない奏者(ぼくはたぶんそうだ)が多いのではないか。一旦楽器を置いて左腕を伸ばし、パンチングの動きを元にして左肩も柔軟にしていけば、左腕全体の動きに大きくプラスになりそうな予感がする。

パンチや「投げる」動作は、体幹部から「投げる」感覚が重要であり、上腕と肩の「分離」感覚はそのために役立つという。そして体幹部から投げる感覚を伸ばすには肋骨を意識的に変形させるストレッチや、肩甲骨を柔軟に動かすストレッチが有効であるという。これも演奏のためにそのまま使えそうだ。

2008年3月4日火曜日

謙虚さについて

謙虚ということについて考えていた。

ええっと言われるかもしれない。身近で、口の悪い人や勘違いしている人には、おまえの辞書に謙虚なんて単語載ってるのかよ、なんて言われかねない。この言葉自体は、たしかにぼくはあまり好きではない。だがその理由は、安易に使われすぎてすり切れており、空虚な標語と化してしまう可能性が高いからだ。たんに卑屈に縮こまった姿勢を導き出す可能性もある。それがどう機能するかはポワン・ド・キャピトン、つまり状況や文脈による。

少なくともスキルや知識に関することでは、謙虚という言葉に意味があるとすれば要は、自分のまだ知らないもの、分かっていないものがそこにあるのではないかと予感する能力、そしてそれを探究していこうとする好奇心なのではないだろうか。いずれにしても、こうした定義を考えて、それを短縮する意味でしか、謙虚とか、そんな言葉は使えない。たんに謙虚さが必要だ、と口にすることには意味がない。謙虚の意味をいちいち確認しなければならないのだ。

2008年3月3日月曜日

甲野善紀の仕事と音楽とを考え合わせる

なにしろテレビは10数年来ろくに見ていないものだから、一部そうしたメディアも上手に利用して知られてきていたらしい甲野善紀氏のこともほとんど知らなかった。

とりあえず手に取ったのが文庫本3冊。
どうもナンバ的な感覚がクラシックの拍節に真っ向から対立する・障害になるのではないかと思っていわゆるナンバ周辺のことを調べはじめ、甲野氏の本も何冊か読むことになったのだけれど、氏の「武術」の身ごなしは、そんな単純なものではまったくないのだった。むしろ、現にスポーツをはじめとしてあらゆる領域で様々な人たちによって応用が模索されているように、楽器の演奏にもそのまま当てはめて考えてみるべきことが多く、それがそれでまた僕の関心を引いている。たとえば甲野氏の身ごなしの具体的な出発点となった「井桁崩しの術理」。ヴァイオリンのボウイングなどは、この「井桁崩し」の動きそのものではないかと思う。「初心者」のボウイングは、肩を中心にした「ヒンジ運動」になる。それが、楽器、弓と組み合わさった「井桁崩し」にならなければならないのだ、と、この言葉を使えば、言える。(『身体から革命を起こす』にはまた、甲野氏のアドヴァイスを受けながら奏法を改良していったフルート奏者の話が出てくる。)

またたとえば、「表の体育」と「裏の体育」の相克に関する洞察は、平均律と均等拍に縛られた「表の音楽教育」の問題に重ね合わせてみることもできる。

拍節のことに話を戻すと、甲野氏の研究は(乱暴な纏めかたになるが)気配を消し、瞬発的な動作の効果を高める方向を向いているので、通常音楽に現れるような拍子や「リズム」は少なくとも表面的には出てこない。一方で、日本の、(クラシック的に見て)ダメな奏者のリズム感というのは、やはり現時点の僕にとっては、「ナンバ的」と名付けるのがしっくりくる。「よいナンバ」と「悪いナンバ」を区別するべきなのだろうか?

この問題、まだまだじっくり調べていかなければならないようだ。

2008年2月29日金曜日

左手のフレームを確実にする


ロバート・ガールの『ヴァイオリン練習の技法』Art of Practicing the Violin: With Useful Hints for All String Players(←リンク先は日本のアマゾンですが、高価な古本しか出てこないかもしれません。その場合は米アマゾンあたりで探された方ががよいでしょう)が面白い。そこに出ていた左手の練習法の一つがこれ。
ガールはまずは左手の4本の指の位置のパターン分類から始める。パターン1から3は、1指と4指の間が2全音半となる基本とも言うべき形で、3、4指の間が半音となるのがパターン1。ここまではどこにでもある着眼かもしれない。

で、まずはそのパターン1で、二本の弦を1指で5度把弦したまま、その高い方の弦で4指まで行って帰ってくるだけの練習。半音ずつ上がっていってはこれをやる。G線D線で始め、4、5ポジションまで行ったら隣の弦(D線A線)に移る。譜面に書くと上掲画像のようにややこしくなるが、非常にシンプルな練習だ。

これは左手のフレームを確かなものにして、正確なイントネーションを作っていくうえで、非常に効果的な練習だと思う。パターン1〜3では、4指を押さえたとき、1指とオクターブになるわけで、純正さが簡単に分かる。この練習をやってみて、4、5ポジションあたりで、自分のフレームが微妙に狂っていることがたちまちはっきり分かってびっくりした。一発で正確に取れていないのだ。このあたりのポジションでの、左腕の入りこみ具合についての感覚が、ほんのちょっとズレているらしい。

こんな恐ろしく基本的なところに穴があったか、という発見(うう)。フレッシュでも小野アンナでもスケールを真面目にやっていればこんな欠点はおのずと修正されていたはずなのかもしれないが、怠け者のぼくはそれをあまりちゃんとやってこなかった。それに、ただのスケール練習では、この狂いは自覚しにくい。この練習をしばらく続けて治療することにしようと思う。

ガールの上掲書には、他に、ボウイング、初見、暗譜などの効果的な練習のしかたが紹介されている。まだぱらぱらとしか見ていないのだけれど、なかなかイイです。ボウイングのみに特化したThe Art of Bowing Practice: The Expressive Bow Techniqueもある。

2008年2月28日木曜日

Leopard (Mac OS X 10.5) の「辞書」増強 その2


デジタルデータのある辞書なら、うまく変換してやれば「辞書」アプリでも使えるはずで、ことに日本では多くの資産のある EPWING フォーマットの辞書が変換・加工できれば選択範囲がぐっとひろがる。
binWord/blog: Leopard の「辞書」アプリでEPWING辞書を使うによれば、可能は可能らしいが、辞書ごとに細工が要りそうだし、加工には Windows でしか動かないソフトの利用が前提になっているし、まだ誰もが気軽にできる作業ではなさそうだ。

StarDict というフリーの辞書ソフト/データがあって、Mac OS X 用の閲覧ソフトもあるのだが、あまり使いやすくはない。だが、案外豊富な StarDict フォーマットの辞書データは、比較的簡単に Leopard の「辞書」アプリで使えるようにすることができるのだ。(ソース

  1. StarDict のサイトから必要な辞書を "tarball" リンクをクリックしてダウンロードしておく。解凍の必要はない。
    ここでは Langenscheidt Großwörterbuch: Deutsch als Fremdsprache と Duden を使ってみる。

  2. DictUnifier をダウンロード
    "DictUnifier.dmg" がダウンロードされるはずなのだが、なぜかファイル名が "DictUnifier.dmg.bz2" になることがある。そのままダブルクリックしても正常に展開されないので、末尾の .bz2 を消して、ファイル名を "DictUnifier.dmg" としてからダブルクリックする。
  3. マウントされたディスクイメージ内の DictUnifier をアプリケーションフォルダにドラッグしてインストール。
  4. アプリケーションフォルダ内の DictUnifier を起動すると、辞書ファイル選択画面になる。Choose ボタンをクリックして、予めダウンロードしておいた辞書(.tar.bz2 の圧縮ファイルのままのもの)を指定する。変換がうまくいかない場合は、辞書ファイルの名前を、スペースなどを含まない適当な半角英字のみに変えておく(.tar.bz2 の拡張子は消さないこと)。
  5. Convert ボタンをクリック。しばらく待つと、変換が終了し、辞書アプリが立ち上がる。

これでドイツ語も command+control+D で辞書引きができるようになった(独和ではなくて独独だけだけど)。
StarDict 用データには、和独辞典もある。Dictionaries ja のページの WaDokuJT Japanese-German dictionary. これもけっこう使える。
また、韓国語、中国語、ロシア語などの辞典、WordNet のデータ(Special のページ)などもある。

# StarDict のリトレ仏語辞典も入れてみた。なぜか prendre や perdre がヒットリストには出てきても内容表示できない…。ま、ロワイヤル仏和が使えるからいいや。